2010/11/30

最終節


 サッカーに触れていると、時に様々な苦しさが付き纏う。残留や昇格の争いだったり、自分の愛するクラブがなかなか前に進めずにもがいたり。選手もファンもクラブも、ボールが気まぐれに動く度に歯を食いしばり、目の前の敗戦にも、ライバルクラブの躍進にも心が曇る。しかし、サッカーの本質から、こんこんと無限のように溢れ出してくるのは、人を夢中にさせる喜びや感動だけだ。この3試合、ザスパ草津が戦うピッチには、サッカーをプレーする喜びと、そこに立ち会い共に戦うサポーターの喜びが溢れていた。最終節を迎える今、自分がザスパの一員としてこのクラブの原点ともするべき状況に身を置けることを嬉しく思う。

 思えば、サッカーをやっていて一番苦しかった時、自分はブラジルにいた。日韓ワールドカップが開催される中で国内リーグも並行して行われていて、人々はまさにサッカー漬け。しかし、その熱狂はどこかからの借り物のようにやって来たのではなく、ボールと人のあるところに溢れ出る熱として、超然と存在していた。当時、自分の周りには給料未払いで苦しむチームメイトやスタッフ、クラブに住みこんでチャンスを掴もうと必死の若手選手たちがいた。クラブに集まる様々な人間の中心にサッカーがあって、苦しい状況の中でも熱が生まれて、皆が生きていくエネルギーになる。前に進めずにもがいていた自分に、ブラジルはサッカーの奥の深い楽しさを教えてくれた。

 プロサッカーの無かった地域に小さく生まれて、サッカーが日常に無かった人々を巻き込んで、ここまで戦ってきたザスパ草津。力強く無限の湧出量を誇る草津温泉の湯のように、喜びや感動の湧き止まないクラブでありつづけるようにと願いを込めて、最終節に臨みたい。

2010/04/13

2010


 群馬では冬から春先にかけて嵐のような突風が吹き荒れる日が多くある。 昨年に越してきた頃は、あまりの突風と、その風の止む気配の無さに、これからの生活の不便さを残念に思えたものだった。

 新しいシーズンが始まって、同じ街での生活も2年目を迎えている。突風には慣れることは出来なかったが、それでも昨年と同じように、いつの間にか風はなくなっている。毎朝の犬の散歩コースにある麦畑は、これから昨年と同じように順調に育ち、梅雨前の収穫が終わると、今度は水路から水が引かれて同じ場所に稲が植えられるはずだ。住んでみて初めて知る事が多いからか、地元の人が多く住む中混ざって住んでいるからか、目の前にあるのは何気無い自然の移り変わりなのに、日々群馬を好きになる。これまで住み慣れた頃に次の街に移ることの多かった自分にとって、自然の豊かな群馬でまた新たな四季を迎えられる事を嬉しく思う。

 リーグ戦では、昨年と同じような好スタートを切ることは出来ていない。しかし、ザスパ草津にとって毎週末にやってくる試合は、どんな状況であっても、その1試合1試合がこれまでの長い苦労を元に得たチャンスだと思う。思うように結果が出ない状況で、未だなかなか今年のサッカーの色を表現する事は出来ていない。しかし、苦境を体当たりで乗り越えてきたクラブとしての色がグラウンドで滲み出るような、そういう試合をしていきたい。