2008/12/15

追想


 時々ふと、ついこの間まで母の病院に通っていたという事が不思議に思える時がある。亡くなるまでの最後の2ヶ月、毎日のように家族が集まり、ああだこうだと話をして、皆でお茶を飲んだり母の足をマッサージしたり、時にただぼんやり過ごしたり。それは自分の人生に於いて何物にも代えようの無い、宝物のような大切な時間だった。偶然かもしれないが、この3年間を病院からそう遠くないヴェルディというクラブでプレー出来た事に深く感謝している。

 ヴェルディで過ごした時間、これまでのキャリアの中で一番、自分のプレーがイメージに近かったように思う。チームはいつもギリギリの状況が続いていた。それでも、どんな時でもプレーしていて本当に楽しかった。だからサポーター皆の「ありがとう」と言う別れの言葉に対し、自分が返す言葉も「ありがとう」になる。サポーターの期待と励ましと声援と、逆境や感動を共有できた事に。本当にありがとう。

 サッカーをキャンバスに喩える事があるが、それならばヴェルディは既に一度完璧に完成された絵だ。Jリーグの歴史が続く中で、人間が入れ替わりつつ、それぞれが日々一筆ずつ足して、なお絵として新たな魅力を持ち続けるというのは簡単な事では無い。大きくバランスを崩したり何かを失ったりする事もある。ただ、大事なのはその過程を経てクラブから伝わってくる直向さやヴィジョンなのであって、そこから発せられる強いメッセージが、将来への期待や夢になってサポーターを惹きつけるのだと思う。

 ヴェルディが今後もヴェルディらしくありつつも、新たな魅力の種を蒔き続けるクラブである事を期待している。

2008/06/13

アヒルと猫


 ナビスコカップの予選が終了して、Jリーグは中断期間に入った。束の間のオフを挟んで、御殿場でのミニキャンプからは、チームにとっても自分にとっても仕切り直しになる。

 少し前になるが、キリンカップのパラグアイ代表として来日した、セロ・ポルテーニョ時代の仲間に会うことが出来た。選手が2人にドクター2人。そのうち2人のあだ名は「パト」と「ガト」。雰囲気が似てるからという理由で、そのままアヒルと猫である。思えば彼らのおかげでスペイン語の「アヒル」と「猫」はすぐに覚えた。他にもチームには、ニワトリに猿、コウモリや虎や牛などもいたから、自分のスペイン語の語彙は簡単に増えていった。
「やっと日本に来られた。本当に美しい国だね!」

 南米を出てからもう6年が経っている。同じフィールドではなくても、お互いに世界のどこかでサッカーを続けてきた。また彼らに出会えた事、そしてパラグアイで自分が幾度となく説明させられた日本という国を、少しでも知ってもらえた事が嬉しかった。

 写真は束の間のオフに。

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 先日、プロジェクト・エスペランサの活動として、パラグアイの子供達へサッカーボールの寄贈が無事に行われました。(詳しくはプロジェクト・エスペランサblogから)皆様の本当にたくさんのご協力に感謝しています。一張羅のユニフォームを着て集まってくれた子供たちの笑顔は、自分の知っているあのパラグアイの子供たちそのままです。その様子は遠く日本からでも目に浮かんできます。本当にありがとうございました。今後も様々な形を模索しつつ、活動を続けていくつもりです。応援よろしくお願いします。

2008/04/11

フラッグ


 この春から、家から歩いてすぐのところにある商店街に、ヴェルディのフラッグが掲げられるようになった。自分のプレーするクラブの旗が、自分の住む街にはためく。このJリーグでも当たり前ともなりつつある事は、広範囲に散らばって住んでいるヴェルディの選手にとって、今まであまり経験の無い事かもしれなかった。これがなかなか嬉しい。J2から再びJ1に舞い戻って、クラブはまた少しずつ新しい歴史を作っていかなければならない。明日は3年振りの東京ダービーだ。
 残念なことに、久し振りの怪我で今回のダービーには出られない。症状は思ったよりは軽く、初期治療が効果的だった事もあり、順調に回復している。しっかり治して最高のコンディションに戻してから、そのころ昇り調子であろうチームに合流できたらと思う。


 だいぶ時間が経ってしまいましたが、昨年の「プロジェクト・エスペランサ」のチャリティー活動の成果として子供達に手渡すボールが完成しました。たくさんのご協力ありがとうございました。近々、配布の様子もプロジェクト・エスペランサblog上にてお伝えできると思います。

2008/01/25

2008


 今日から東京ヴェルディの2008年シーズンインとなった。デザインが変わった緑の真新しい練習着に袖を通すと、これから始まるシーズン前のフィジカルトレーニングへの憂鬱も薄らぐのが不思議だ。寒風が吹きさらすグラウンドで、毎年恒例の必勝祈願が催され、選手・スタッフの皆が顔を揃えて神妙に儀式を執り行うと、いよいよ今シーズンがスタートした事を実感する。

 チームとサポーターとが一丸になり、苦労をして、そして心を込めて昇格させたチームで今シーズンもまたスタートを切る。それは自分にとって初めての経験で、サッカー選手として幸せな事だと思う。自分にとってもチームにとっても良いシーズンに出来るように、まずはキャンプインまでしっかりと準備をしたい。